東京地裁に行って来た8〜不当解雇と地位復帰

いよいよ、こちら側メンバーが呼ばれました。


先ほどのテーブルの、今度は真ん中に、審判員(裁判官と民間の知識人)3人と向かい合って座りました。
「さて、先に確認しておきますが、こういう事(不当解雇と裁判=労働審判)が起こってしまったので、元の待遇のままという訳には行きませんが、職場復帰することは可能だと思いますか?」
知人も私も、思わず大きく苦笑をもらしました。
「ええ〜、無理でしょう」
「いえいえ、冗談ではなく、真面目な話です。どうですかね?今、仕事をしてらっしゃるんですか?」
知人は生活のこともあり職探しはいたようですが、今回の労働審判で心身が落ち着かず、決めていないようでした。
「いえ、無職状態です」
「わかりました」


しかし後から弁護士さんに指摘されましたが、ここは本当は
「職場に戻りたい」
「仕事はしていない」
ときちんと返事をしないといけないところだそうです。
「不当解雇のため、地位復帰を求める訴えだから、元の職場に戻りたくないとか、仕事を探しているとか、新しい仕事に就いたとか、建前上は言ってはいけないんですよ」
との事。
こういう機会はもう、一生のうちでないと思いますが、これから経験される方には、ぜひ覚えていて欲しいですね!
あ、でもこんな経験、できればしないで過ごせれば幸せなんですけどねぇ…


「さて、私はあちらに『▲年分の賃金をお支払いして、話をつけたらどうか』と提案しました。どうでしょうか?」
「●年分といいたいところですが、最大譲歩で▲年分でしょうね」
「ああ、やはり!あちらにも『たぶんX弁護士なら、●年分と言いたい所を譲歩して▲年分で、仰ると思いますよ』と話したんですよ」
「当たり前ですよ、金額計算の論拠は…」
「ああ、判ってます」
と弁護士さんをさえぎり、審判員さんが笑いました。


正直、私は内心で驚いていました。
法律上では、解雇予告は1ヶ月前に出す、という知識しかなかったので、せいぜい1か月分くらいもらえるのだろう、位は思っていたのですが、●年分って!!
▲年ぶんでもすごい金額です。数百万円です。


しかし考えたら当たり前なんですね。
真面目に普通に勤務していた人が、特に理由がなく簡単に解雇になるなんて、許されることではないのです。
企業には、雇用した従業員の生活を安定させる社会的義務があるのです。
「はい、クビです。1か月分の給料払うから、好きに仕事探しな!」
では済まされないのです。
万が一解雇理由があるとしても、それを本当に回避しようと努力したかが問われるのです。
もし本人に解雇される重大な理由があれば、指導をしたり改善の段階を踏んだかを確かめられます。


後は、金額の話しです。申立人の知人と会社の交渉になりました。
私はもう関係ない個人的な内容なので、席をはずし、トイレに行ったり廊下をうろうろしたり見学をして待ちました。
流石に建物の構造は古いと聞いたとおり、トイレの間取りもかなり手を加えて広げたり設備の増設をして、使いやすくしてありました。
廊下の突き当たりにある窓から、霞ヶ関のオフィス街を見下ろして眺めました。


審判の結論は、後日に持ち越されました。もう少し続きます。