秘太刀馬の骨

前半は、しっとりうるうる泣かせる情景。
父の治療費のために意に染まぬ妾奉公に耐えていた多喜ちゃんの、そのお父さんが甲斐なく亡くなってしまった。
家から出さないと言い張る家老を、何とか銀次郎が同行するからと説き伏せ、やっと父の死に顔を一目拝むことができた。
たかが足軽の娘が家老の側室にまで「出世」し、父の上役の足軽組頭にまで敬語を使われ、家老の長男を連れた「奥方」として扱われる。更に辛そうな多喜の表情、わななく口元がとても苦しげ。
葬儀の場にいる全ての人の、沈痛でやりきれない雰囲気がひしひし伝わってくる場面。
銀次郎は、帰りに半十郎の家に多喜を連れて行く。「友の家だ」
全てを察している賢く優しい半十郎の妻・杉江の胸で、「私は何のために…」と一言絶句し、それでも声を出せずむせぶ姿に、思わず私も涙を誘われてしまった…


後半は一転して、激しい剣の打ち合いの迫力に圧倒された。
特にこの作品の殺陣は、形式美よりは、はるかに実践的な本当の剣戟を描こうとしていると思う。
剣と剣とのぶつかり合い以上に、肉体の能力の全てを駆使して優位を争う感じが、とても生々しくて、好感。(勿論、形式美の殺陣も好きですが♪)


本当に45分がきっちりうまく構成されている。
秘太刀の伝授者を探し出せず、叔父である家老の企みまで知ってしまった銀次郎が、命をねらわれる最後のシーン。
意を決して共に逃げる多喜と赤ん坊をかばいつつ、追っ手を刃を交える姿は、勿論同じ内野聖陽が主役をつとめた同じ藤沢作品の「蝉しぐれ」の相似を思った人も多かっただろう。


さて、どうも戦った6人の中に、本当は秘太刀の使い手はいた模様。
深手を負った銀次郎と嫉妬・野心剥き出しの家老、半十郎…
来週の最終回は、誰が最後に笑うのか。誰が泣くのか。
http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/index.html

秘太刀馬の骨 (文春文庫)

秘太刀馬の骨 (文春文庫)

蝉しぐれ (文春文庫)

蝉しぐれ (文春文庫)

用心棒日月抄 (新潮文庫)

用心棒日月抄 (新潮文庫)

↑腕におぼえありの原作。続編は段々暗くなる…