花渦

花渦

花渦

一人の男が蒸発し、周囲の女達の心に小さな波紋が生じる。
それはすこしずつ広がり、彼女らの関係性も深くなっていく…


最初は具体的で写実的でさえある描写だが、段々と心の動きや内面を描く文章が絡まってきて、夢なのか現実なのか妄想なのか(しかも誰の?)、判別できない渾然一体な世界となっていく。
登場人物同士まで混じり合い、読後ににゅるっとした感触が手に残る。最後まである部分はちゅうぶらりんのまま。
何かミステリーが起こり、その結末を書く物語ではない。
女達が、どうなるのか。何を思うのか。それこそが問題なのだ。


そして、切り離せない生と性。上品な描写の中にも、女の性の本質をとらえていてる。
「燃える塔」を読んだときも思ったが、なんて艶やかなのだろう。

燃える塔

燃える塔