第9地区

どんなお馬鹿映画かと思って、すぐ上映が終わっちゃうだろうと慌てて見に行きましたが、凄く皮肉の効いた、メチャメチャハードなSFでした。
ハードSFですが、ある意味ハートウォーミング???な結末で(笑)
ちょいとネタバレです。


最初から、ブラックで突飛もない設定です。でも突拍子もない設定だからこそ、反対に妙にリアリティがあります。


だって、難破した宇宙人達が隔離される難民キャンプは「南アフリカヨハネスブルグ」で、道路やお店に「地球人専用地域、宇宙人お断り」の標識が堂々と掲げてあり、「宇宙人のお陰で治安が悪くなったわ」なんて主婦がインタビューで答えてるんですよ。少し前のアパルトヘイトそのものです。
対象が「気味の悪い動物で、人類でない」からこそ、あからさまな蔑視と差別がまかり通っています。それに気付くと、観客は物凄く居心地が悪くなります。


血飛沫や肉片が飛びまくりの、こちらの内臓が痛くなるような描写が多いのですが、そんなシーンでもその肉片や血が「撮影カメラのレンズ」にベチャっと飛んでくるのは、あくまでカメラのこちら側で映像を眺める観客である私達が、悲惨な運命に巻き込まれた登場人物(宇宙人含め)に思い入れする事を許さず
「これはあくまでニュースやドキュメンタリーですよ〜。貴方達は安全な場所にいるから、エンジョイできるでしょ!」
と、反対におちょくっているという図式になります。


宇宙人と地球人の立場を全く逆にしてみると、180度話のトーンが変わります。地球人が異星人の世界に入り込んだけれど、マシンのトラブルで地球に帰れなくなり、なんとかしようともがく話なら、とても陳腐で古典的です。


ま、百聞は一見にしかず。ブラックな話やきっちりしたSFが好きな人には、オススメです。