半所有者(河野多恵子)

今年は私の読書傾向が変わった年だった。他人のブログや日記を読んで、それに影響されて読んだ本も多かった。
硬質で重厚な設定、硬いつくりの作品が元々は好きなのだが、甘い叙情的な作品や幻想小説も多く読んだり。


その中で、一番印象深かったのがこの一冊。

半所有者

半所有者

とても短い短編なのに、豪華で美しい装丁。上品な文体も魅力。
そしてそれからは想像できない、ミステリアスで驚く結末。
若い頃には決して感じなかった夫婦の姿の奥深さを、既婚者の今だから味わい、感じることができたと思う。
絵画でも、映像でもなく、小説と言う手法だからこそ描けたと言うべきか。


あまりにインパクトが強かったので、同じ著者の作品を続いて読んでみた。

秘事

秘事

題名から邪推していたような下衆な内容ではなく、しっとりと押さえた筆で描かれたこちらも夫婦の生活の奥深さ。
本当に大切な事は心に秘めて言わずにおく、静かな決意。
派手な事件や人間性のさらけ出しあいがない故に、更に夫婦の結びつきの機微を感じることが出来る上品な作品。静かな感動を覚えた。勿論、上記の「半所有者」には及ばないが。
偶然続けて読ん二作品だが、何となくシリーズ作品のような印象も…と思ったらちゃんと一冊に収められた本も出ていた(笑)
秘事・半所有者 (新潮文庫)

秘事・半所有者 (新潮文庫)