陛下(追加)
- 作者: 久世光彦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1996/02
- メディア: 単行本
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セピア色の世界で、色気と死と静謐と狂気が交錯する。
哀しいというには幸せすぎ、あっけないと言えば鮮やかすぎる、血流の物語。
主人公の青年将校が軍刀を見つめるシーンが、一番印象深い。
世に、鍛え抜かれた刀身を見つめると心が静まると言うが、彼は獣の心になるという。
獲物を狩る肉食獣と、狩られる弱き獣の両方に。
私は、どちらでもない。
心が静まるのでも心を奪われるのでもなく、その存在を感じ、組織を見つめ、考察する。
刀身に限らず、どうも私は見るもの、触れるものの内部に潜って、成り立ちを感じ取ることが多い。
つい、美しさを鑑賞せず、対峙するものの具体性を求めてしまう…良くも悪くも。いや、良い癖ではないだろう…
自分と登場人物を比較しながら、読んだ作品も久しぶり。
それだけ心にしみた、ということか。