「お父さんの恋」前楽

結局、堺雅人Yの生のお姿を見たいのと、お芝居自体もとても良かったので、二回目の観劇。ダンナも一緒に渋谷へ。

初日を見て気付かなかった事、あれこれ。
「芝居の前」
●花(ほとんど贈り主の名札のみだったが、堺さん宛のものが二つ三つ増えていた)
●左端からだと、セットの最左が見えない!結構重要なシーン&小道具が見づらいのは頂けない…
●グッズのポスターは売り切れていた
●Tシャツはアメリカンサイズで、一回りも二回りも大きめ
●舞台から離れた席で見るとわかる、ベテラン役者の声量と舌滑はさすが!(若い星野真理は、どちらもこれから…。他の役者の声の通りの良さと比べると一目瞭然)


ここから、ネタバレ有り!!



「芝居を見て」

初回では結構クールで、気持ちが入りこむほどではなかった私だが、二回目は何度も鼻を啜ってしまった(勿論花粉症ではなく流涙)。きっちりとストーリーを把握していたからこそ、細部の描き込みに心が動かされた。
娘であり、長女であり、母でも有る38才の女として、一度は人生をリタイヤしかけた(仕事も金も失い、鬱病を得た)ためか感情移入できる部分が多かったようだ。
笑わせた後のホロリとさせるところ、反対に泣かせた後での爆笑シーンなど、緩急がはっきりしていて楽しい。
導入部分のうまさは勿論だが、日常的な語彙で常識的な会話の流れでセリフが構成されているため、芝居としては大変分かりやすく入り込みやすいのだが、内容は複雑で結構ブラック。
特に、主役に配された堺雅人は、斜に構えて何に対しても冷静…というより冷淡で冷酷。「壬生義士伝」とは違う意味でブラック堺。


幕開けから、登場人物がそれぞれ胸に一物を秘めて牽制しあっているのが感じられる。
ヘルパー・深谷さおり(星野)は、献身的で優しいが明らかにこの家に来た経緯を隠したがっているし、次女・杉本美樹(菊地麻衣子)も、仕事でトラブルを抱えているので財産を欲しがっているのが見え見え。
無邪気に見えて可愛らしい長女・正子(七瀬なつみ)にも秘密があるし、藪医師(池田成志)もおふざけに隠れた寂しさがある。
明るくて恋に弾むお父さん・杉本正樹(前田吟)に到っては、実は寝たきりの植物状態、目も耳も口も動かないのだと知らされる。


実はここまでが序盤で既に明かされており、第一段階と言える。
そこから一悶着、二悶着あるのだ。
他人(自分以外の、血のつながった家族でさえ)には見えない、切ない切ない一人一人の生活が、薄皮を剥ぐように明らかになっていく。
はい、さすがにここまでね。知りたい人は、お金を払って舞台を見るべし!もしくは、DVDを購入しましょう。


細かいネタで気付いた事。
●いつのまにか隠されていた重要書類。着替えや掃除や洗濯の時に正樹にヘッドフォンとアイマスクをつけさせたさおり。実はそれこそ、盗みの現場を見せたくなかったからだったらしい。
●即刻出ていくように言われた日の翌日、いつのまにかさおりの荷物は運び出されていた。早朝、正樹の死んだ妻の墓参りに行ったと告げるが、実は荷物を運び出していたようだ。
●お互い利害だけでつながり、冷えているように見える兄弟・家族仲だが、それすらもお互いの甘えからきているのだろう。
●こなれた「アドリブ」。スリッパで弟(堺)の頭をはたく美樹だが、本気で叩いていたらしく、先輩(池田)が「本当に痛いから!」とかばったり、セットからはみ出して転がる池田を本気で笑う七瀬など…初日では見られなかった親密さが溢れていた。
●後ろの方で小ネタを連発する池田。