華岡青洲の妻 #6(最終回)

充実して、しっくりと胸に落ちた最終回だった。時間配分も演出も秀逸。


盲目となったが落ち着いた日々を送る加恵。しかし、義妹・小陸が血瘤を発症してしまう。(同じく於勝が乳癌だった事を思えば恐らく、遺伝的な癌体質だったのかもしれない。)
名医となった青洲でも手の施し様がない。妹の顔も見に来なくなる兄。
「自分が盲いた為に嫁にも出してやれず、主婦をさせて犠牲にしてしまった。」
と泣く義姉に、恨み言とも皮肉ともつかない冷めた言葉を告げる。
「自分は苦しみぬいて死ぬ運命だが、ずっと嫁姑の確執を残さず見てきた。そのどちらの立場にも立たずに済んで、本当に幸せだ。」
義母への感謝だけを感じている加恵には、衝撃だった。しかし「それはあねさんが、おかはんに勝ったから」と言われてすくんでしまう。
しかも、見舞いに来ない兄への辛辣な気持ちも露わにする。
「発症したのが妻であるあねさんだったら、あにさんは躊躇わずに手術しただろう。血縁の女兄弟は役に立たないから嫁にやられるのだ。所詮嫁姑の争いさえ、男の立身の糧でしかない。」
幸せだと言いながら、来世は女には生まれたくないと身体をよじって号泣する小陸。
なんて哀しい運命。女で、優秀な長男の妹に生まれたばっかりに、家と兄の犠牲となり、女の醜さ、辛さだけを引き受けてしまった。
小陸の死後まもなく、完成した麻酔薬を使った初めての乳癌手術が行われた。
義母の位牌の前で泣き崩れ、謝る加恵。
一体何を謝ったのか。立てついた事か、敗北感を持たせた事か、一人で死なせた事か、義妹を幸せにしてやれなかった事か…
見る人によって色々と感じさせるシーンだろうが、恐らく義母と比べて自分は優れた嫁ではなかった、自分の人生は間違っていたという後悔。加恵は今は他意はなく、そこまで義母に心服し、成長して心から華岡家の女主人になりきっているという事でもある。それはやはり、義母の死後だからこそ、感じられる余裕だとも思うが。
夫・青洲は「お前はこの家に必要な、素晴らしい嫁だ。乳癌を切り取ったのはお前だ。」と感謝を表し、加恵と母の苦労を労った。
それでもラストシーンは、原作通りかなり皮肉が効いている。
母の墓を塞ぐように立つ加恵の墓と、二人の墓と比べ物にならない立派な、正面に立てられた青洲の墓。実物は原作のイメージより普通だったが(笑)、結局女は家と男の影の存在でしかない、という結末。


このドラマで、個人的に見所だったのは①「和久井映見の素晴らしい演技」
18才から初々しい新妻と40才半ば過ぎた盲目の妻の演じ分けが見事だった。本当にその年齢の人の動き・表情になっていて、目が離せなかった。
そして②「小田茜の成長ぶり」
美少女コンテストで出てきた人で、最近はあまり画面で見なかったと思うが、今回の役はとても良かった。これまた年若い妹から40才過ぎの老嬢を、きりりと表現していた。美しいステキな女優になった。
③勿論、谷原章介の美形医者っぷりも外せない〜。毎回ウットリ〜Y